学生時代の友人M君にばったり会った。
「いやあ久しぶり。元気か。」 などと言い合っていたが、私が『幽』という雑誌を持っているのを見て、 「変な本読むんじゃねえよ。」と怒った。 相変わらずである。 M君は非常に臆病な人なのだ。 巨漢で、いかつい顔をしているくせに、暗い夜道を一人では歩けない。 怪談などもってのほかである。 幽とか霊とかいう文字を見ただけで震えてしまう。 その極端な臆病が原因で、学生時代に警察のご厄介になったことがある。 ある有名な書店で、本を探していたM君は、にわかに顔面蒼白になり、あわてて店を飛び出したのだ。 店員は、M君の不審な挙動を見て万引だと思い、M君を追いかけてとりおさえ、警察を呼んだ。 取り調べの結果、M君の無実は証明され、事なきを得たが、不審な挙動の説明はできなかった。 その書店には、『死霊』という本が平積みされていた。 表題の恐ろしさに加え、装幀はモノクロでおどろおどろしい。 M君は、その本に心底恐怖して、店を飛び出したのだ。 誰がこんな話を信じよう。 スポンサーサイト
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