【昔書いたバカバカしい文章を公開します】
超短編小説 魔ラソン アナウンサー 「さあ、大日本国際大マラソンの幕が切って落とされました。 世界各国から招待された50人の一流選手と、 国内の50人の有力選手が出場します。 また一般参加の500人の市民ランナーも参加しています。 解説は、無駄のない洗練された走りで一世を風靡した、 元オリンピック日本代表の背高さんです。」 解説者 「背高です。よろしくお願いします。」 ------------ CM -------------- アナウンサー 「10キロ地点を通過しました。 ジンジロ国のマージョリン選手、 スーダラ国のスイダララッタ選手、 ホンダラ国のホダカラ選手といった、 優勝候補の選手が先頭集団を形成しています。」 「おや?先頭集団に奇妙な走り方の選手が現れました。 日本舞踊のような手つきで「ひょっとこ」のように口をとがらせ、 腰を落として、ぴょんぴょん飛び跳ねながら走っています。」 解説者 「単なる目立ちたがり屋ですね。 あんな走り方ではすぐに消えますよ。 オープン参加とはいえ、けしからんことです。 まじめにやってほしいですね。」 ------------ CM -------------- アナウンサー 「20キロ地点を通過しました。 先頭は、依然として無名のひょっとこ選手です。」 解説者 「じきに消えます!無視しましょう。」 ------------ CM -------------- アナウンサー 「 30キロ地点を通過しました。 優勝候補のジンジロ国のマージョリン選手、 スーダラ国のスイダララッタ選手、 ホンダラ国のホダカラ選手らが激しく競っていますが、 大変申し上げにくいことには・・・ その前をひょっとこ選手が走っています。」 「おや、また奇妙な走り方の選手が先頭集団に現れました。 両腕をそろえて機関車の動輪のように回しています。 下あごを突き出して、息を吹き上げ、 『しゅっしゅっ』と声を出しながら走っています。 選手の名前は・・・ええと・・・・座戸別久です。」 解説者 「けしからん!ふざけとる!」 アナウンサー 「あっ、また新たに奇妙な選手が先頭集団に現れました。 体を横向きにして、腕と足を交互に交差させながら、 蟹の横ばいのように走っています。」 解説者 「・・・あれは、忍者の走り方です。」 アナウンサー 「えっ?」 解説者 「いや・・・・・」(赤面) 「うおおおっ!なんで変な連中が次々に出てくるんだ!」 マラソンを侮辱する気か!スポーツを愚弄する気か!」 アナウンサー 「背高さん!落ち着いてください! 全国に放送されているんですよ。」 ------------ CM -------------- アナウンサー 「40キロ地点を通過しました。 先頭は依然として、謎の3選手です。 他の選手は大きく引き離されてしまいました。 優勝争いは謎の3選手にしぼられました。」 解説者 「ああ、なんということだ・・・」 ------------------------------- そのころ陸上競技連盟の幹部は、この異常事態に対処すべく集まっていた。 かたわらには異形の祈祷師が控えている。 「困ったことになった。」 「あんなふざけた連中が上位を独占したら、陸上界のメンツは丸つぶれだ。」 「教育上も好ましくない。」 「こうなったら先生にすがるしかない。」 「先生、お願いいたします。」 「うむ」 と祈祷師はうなずいて、御幣を振って祈りはじめた。 「うーーーーーーー ホイヤー、ホダラー、ハーヒダラー、 ホイダラヘイダラハラハラヒー クチスチホクラスイホクニスイホー」 どんつく どんつく どんどんつくと太鼓が鳴りひびく。 すると、どうだろう。 3人の怪選手が、にわかに苦しみはじめ、泡を吹いて倒れてしまった。 ------------------------------ アナウンサー 「あっ、どうしたのでしょう、先頭の3選手が突然倒れました。 苦しそうにもがいています。」 解説者 「当然です! あんなふざけた走り方で42.195キロを走れるわけがありません。 マラソンは、私のように無駄のない、 洗練されたフォームで走らなければいけないのです!」 アナウンサー 「担架に乗せられています。どうやら重態のようです。」 解説者 「マラソンをなめるからそういうことになるんだ。 ざまあみろ。はっはっはっはっは。」 ------------------------------ こうして3人の怪選手はマラソン界から姿を消した。 しかし3選手は教育界に好ましくない影響を残した。 子供たちは、こぞって3選手の走り方を真似し、体育教師を悩ませたのである。 (2004..10.21) スポンサーサイト
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