あるプロの演奏家から酒の席で聞いた話です。
真偽のほどは定かではありません。 ある音楽大学の学生が、アルバイトで臨時の楽団を組んで、さる学校の行事に出演したのだそうです。 演奏する曲は事前に選曲し、十分練習もしていたのですが、当日いきなり「君が代」をやってくれと言われたのだそうです。 君が代の楽譜は用意していなかったので、「楽譜がないのでできません」と答えたところ、「音大生なのに、楽譜がないと君が代ができないのですか?」と言われたのだそうです。 リーダーは、プライドを傷つけられ頭にきたので、「わかりました、やりましょう」と答えてしまったのだそうです。 まあ、君が代ですから、だれでもメロディーは知っています。 メロディーだけを、ユニゾンでやろうということになりました。 「最初の音は『レ』だ」と示しあわせて、演奏をはじめました。 ところが、この楽団は管楽器の楽団だったので、『レ』といっても楽器によって音が違います。 いわゆる移調楽器というやつで、フルートのレはDですが、トランペットのレはC、アルトサックスのレはF、ホルンのレはGになるのです。 それなのに、それぞれの楽器が、勝手に自分の楽器の『レ』から始めてしまったので、珍妙なサウンドになってしまいました。 音大生ともあろうものが、そんな不手際をするとはにわかに信じがたいことです。 気楽なアルバイトの出張演奏ならではの事件といえましょう。 さらに信じられないことに、誰も君が代の正しい調を知らなかったので、修正ができず、ばらばらな調のまま、曲が進んでいったのだそうです。 メンバーは笑いをこらえながら必死に演奏を続けたのだそうですが、笑いをこらえながら管楽器を演奏するのは至難の技です。音がへろへろになってしまったそうです。 そして、ついにテューバが耐え切れず吹き出してしまったのだそうです。 『ブワッ』という大音量が爆発して、それを聞いたメンバー全員が演奏不能になり、曲は中断してしまったそうです。 厳粛な儀式はぶちこわしになり、それ以来その学校から仕事が来ることはなくなったそうです。 スポンサーサイト
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