某国の首相が行方不明になった。
公務終了後に、公用車で愛人宅へ向かったところまでは確認されたが、その後の行方は杳として知れない。 ただちに、このニュースは国内をかけめぐった。 愛人宅云々は厳重に報道規制されたが、外国人記者がすっぱ抜いて、海外のメディアで大々的に報道したので、やがて国民の知るところとなった。 翌日には、首相の片腕である経済大臣が行方不明になった。 公務終了後に、公用車で女装クラブへ行ったが、そこで姿を消した。 女装クラブ云々は厳重に報道規制されたが、またしても外国人記者がすっぱ抜いたので、やがて国民の知るところとなった。 いまだ国政に強い影響力を持っている前首相も行方不明になった。 都内の料亭で、財界人と密談した後、ハイヤーでSMクラブへ行ったが、そこで姿を消した。 SMクラブ云々は厳重に報道規制されたが、またしても外国人記者が・・・ええい!しつこい! さらに、閣僚や有力政治家が次々と行方不明になった。 これはテロリストによる組織的な誘拐事件であるとして、警察は総力をあげて捜査を進めた。 激務による捜査員の過労死が相次いだ。 数日後、首相が高速道路の路側帯に駐車してある車の後部座席に、縄で縛られた姿で発見された。 健康状態は良好だったが、額と両頬に『国賊』と大きな字で刺青が彫られていた。 経済大臣は、都内の郵便局の便所の中から、さるぐつわをかまされた姿で発見された。 首相と同様に、額と両頬に『売国奴』と刺青が彫られていた。 前首相は、郊外のゴルフ場のクラブハウスの便所で発見された。 額と両頬には『馬鹿』と刺青が彫られていた。 その他の行方不明になっていた閣僚や有力議員も次々と発見された。 みんな顔に刺青を彫られていた。 でっぷり太った女性閣僚は『豚』。ベンチャー企業の経営者である若手議員は『守銭奴』。利権の噂が絶えない長老上院議員は『利権屋』と刺青が彫られていた。 中には『短小』、『早漏』などと刺青を彫られた気の毒な議員もいた。 刺青は、特殊な技術で肉の奥深くまで彫りこまれているため、手術で消すことは不可能であることがわかった。 おりしも、下院議員選挙が目前に迫っていた。 こんな顔で国民の前に出ることはできない。 困惑した政府首脳は、国民の洗脳で実績のある広告代理店に相談した。 広告代理店の幹部はこともなげに言った。 「覆面をすればいいんです。ほら日本のどこかの県に覆面をした議員がいるじゃありませんか。 議員がみんな覆面をするようにすればいいんです。 しかしその前に、覆面をファッションとして国民に広める必要があります。 たとえば、馬鹿な国民が喜んで見ている愚劣なバラエティー番組の出演者に覆面をさせるんです。 『なにー、その格好』 『あら知らないの、覆面よ、流行ってるのよ。』 『覆面をしないでテレビに出るなんて、あんた遅れてるわねー』 といった会話をさせればいいんです。 たちまち馬鹿な国民が真似しますよ。」 さっそく、マスメディアを動員して、覆面ファッションの宣伝が行われた。 タレントはみな覆面をしてテレビに出演するようになった。 低能の女子高生が真っ先に飛びついた。 韓流スターが覆面をしてテレビに登場すると、中年女性も真似して覆面をするようになった。 経済界も全面協力した。大企業の経営陣はこぞって覆面をして出社した。 上のすることは下がまねる。特に強制したわけでもないのに、社員たちはみな覆面をして出社するようになった。 覆面をしないで街を歩くのは恥ずかしいというまでになった。 首相は安心して、覆面姿で遊説に出かけた。 スポンサーサイト
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